CPUがどういうものなのか、基本的なことは誰でも学ぶ。実際にパソコンを買えばキャッシュがどのくらいでコアがいくつでクロック周波数がいくつかなど、スペック的なことはわかる。テレビでスパコンのニュースを聞けば、ベクトル型がどうとか並列度がどうとかいかにもわかったように話をする。
だが、実際にそれがどういくことなのか、どういう動作をするのか理解しているのだろうか?
プログラミングのときにスレッドがどうとか、局所性がどうとかベクトル化可能かとか意識することがあるかもしれないが、それを実際にプロセッサがどう扱うか想像できるだろうか?
本書はまさにプロセッサ(CPU,MPU,GPU)の技術の基本から最新の高度な技術まで、かなり専門的な内容になっている部分もあるが、できるだけ専門知識がなくともわかるように丁寧にわかりやすく書かれている。
キャッシュを増やすだけで速度が向上する訳ではない理由、プロセッサ数を増やしてもあるいはコア数を増やしてもそれだけで速度が倍々に増えない理由、実際のコア数以上に同時実行できる仮想コアがなぜ実現可能なのかなどが技術レベルで書かれている。ナノレベルの世界になるとちょっとしたオーバーヘッドも大きな違いになってしまう。コンピュータに関わるすべての人に読んで理解して欲しいこと。
今後の発展方向としての多様性や、省電力化がいかに重要であるかなど、将来性の発展方向に関する記述も、コンピュータ業界を眺める時に重要な視点も与えてくれる。
傑作中の傑作。