iOSアプリケーションで収入を得るには、
・アプリケーションを有料で販売する
・アプリケーションを無料で配布して、アプリ内広告をつける
・アプリケーションは無料で配布するが、アプリ内課金で
1番目の方法は普通にアプリを作って、App Storeにアップロードして料金を設定すればいい。
でも他の方法で収入を得るにはアプリを作るときに一手間必要。この本ではその実装時の作業を教えてくれる。
実際に動くコードサンプルだけではなく、きちんとその仕組みから図を使って教えてくれている。
コードもごく単純なサンプルを示し、動かしながら少しづつ実用的なものに改造していくクッキングスタジオ形式という私の好きな手順で説明してくれている。正常系の一部だけ動くコードを書き、実際に動かして納得。足りないところを足して動かしてコードと動作の対応を納得する。異常系でエラーがあったらどうするかも追加実装が必要。そういうのを最初から全部やろうとすると、手間ばかり多くて面白くなくなるし、動作したとしても実際に自分のアプリで組み込もうとしたときに自分のアプリの仕様と合わない場合にどこを変えればいいかわからなくなる。だからステップバイステップでコードと動作の対応がわかるこの本のような形式が好きだ。
ただコードを修正したときに、どこが変わったのかこの本の表記だとわかりにくいのは欠点。
テスト方法が丁寧に記述してあるのがよい。特に、コード内課金の場合には実際に購入手続きを試さないと動きがわからないからテストができないと困る。そしてこのテストが通常環境ではなくアップルが提供するテスト用環境を使わなければならないので色々と面倒なことがおおい。
その点を間違いやすい部分を強調しながら解説してくれているのがよい。
本書で解説しているアプリ内課金は非消耗型、消耗型、自動更新購読型の3タイプ。一番丁寧に解説しているのは非消耗型。
消耗型についてはサーバー側の処理が必要でこちらはC#(.NETかな?)で説明。PHPとかもっと一般的に広く使える言語で説明してくれていたほうがよさそうなんだが。その点は残念。サーバー側で実際にどういうコンテンツをやりとりするかについてなど詳しい点には立ち入っていない。最低限必要な検証処理などの手順のみ記述。
自動更新購読型についても実装方法やレシートの確認手順などを記述。iOS7より前とiOS7以降のやり方の両方について記述あり。こちらも現在期間中かどうかの確認のみでそれ以上には立ち入っていない。
広告についてはiAdでの実装方法の記述の他、フィルレートなど収入に結びつく重要な部分について詳しく説明し、複数のADネットワークを使い分ける重要性を開設し、そのための方法も実際のコードを使って提示しているのがよい。アプリの改造をしなくても簡単に切り替える方法も書いてあって参考になる。
開発環境はXcode 5 と iOS 7の時代のモノでObjective-Cを使用している。ただ仕組みやコードなどほとんど今でもそのまま使えるコードが多い。Swiftで実装したい場合にはもちろんコードは一から書かなければならないが、参考にはなるはず。
アップル社以外のADネットワークのSDKについてはもちろん最新環境にあわせて修正が必要となる。
出版社のページは以下。サンプルコードは以下からダウンロードできる。著者のgithubページで公開している。
http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/4043.html
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目次
Chapter 01 アプリ内課金と広告を理解する
1.1 アプリ市場の現状
1.2 アプリ内課金を理解する
1.3 スマートフォンアプリ内の広告を理解する
1.4 アプリ内課金+広告を1つのアプリに入れる魅力
Chapter 02 アプリ内課金を実装するための準備
2.1 アプリ内課金の事前準備
2.2 アプリ内課金 - Store Kitの実装
Chapter 03 アプリ内課金の実装:単一の非消耗型と単一の消耗型
3.1 単一の非消耗型プロダクトの取り扱い
3.2 単一の消耗型プロダクトの取り扱い
Chapter 04 アプリ内課金の実装:自動更新購読型
4.1 自動更新購読型の取り扱い
Chapter 05 さまざまなタイプの広告を実装する
5.1 広告を実装する前に考えること
5.2 iAdの広告を採用する
5.3 Google AdMobの広告を採用する
5.4 アイコン型の広告を採用する
5.5 AppBank Networkの広告を掲載する
Chapter 06 アプリ内課金+広告タイプのアプリを作る
6.1 課金と広告の仕様を考える
6.2 課金の実装準備
6.3 アプリ内課金の実装
6.4 iAdの実装
6.5 実行してみよう
6.6 まとめ
Chapter 07 複数の課金パターンを提供するアプリを作る
7.1 どのようなアプリを作成するか
7.2 ゲーム課金アイテムの準備
7.3 課金処理の実装
7.4 動作確認
7.5 まとめ
Chapter 08 アプリ内課金をテストする
8.1 テスト用アカウントでサインインする
8.2 App StoreのURL
8.3 自動更新購読型プロダクト(Auto-renewable subscription)の有効期限と自動更新回数
8.4 自動更新購読型はイスラエルで利用できない
Chapter 09 アプリ内課金と広告のトラブルシューティング
9.1 Store Kitのハマりどころ
9.2 アプリ内課金でのリジェクト
9.3 広告会社が広告を配信しなくなるリスクを考える